3行要約
- 当研究所のフレーバーデータベース(/database/)には2026年7月時点で76ブランド・2,943銘柄が登録され、国別ではトルコが819銘柄(27.8%)で首位、アメリカ697(23.7%)、ヨルダン404(13.7%)、UAE401(13.6%)と続く。
- 年別では2022年の590銘柄をピークに2023年338銘柄まで落ち込み、2024年490銘柄で持ち直した後、2025年は243銘柄と再減速。直近1年は287銘柄が新規認可され、Tangiers(アメリカ)が65銘柄と突出している。
- 直近1年を原産国別に見るとアメリカ87、ロシア76+ロシア/モルドバ32(合計108)、トルコ56となり、ロシア系がトルコを上回る勢いで伸びている点が、累計の勢力図とは異なる直近の特徴だ。
76ブランド・2,943銘柄という全体像
当研究所のフレーバーデータベースは、財務省が公表する輸入たばこの小売定価認可データを一件ずつ収集し、ブランド・原産国・フレーバー名・初回認可日・容量/価格のバリエーションを構造化したものだ。2026年7月18日時点で登録ブランド数は76、銘柄数は延べ2,943件。最古の初回認可日は2018年で、本データベースの実質的なカバー期間は2018年〜2026年7月の約8年強になる。それ以前に認可された銘柄が存在する可能性はあるが、今回の集計対象には含まれない。
ブランドのカテゴリー内訳は「フレーバー(水たばこ用タバコ)」が59ブランドと大半を占め、「フレーバー(タバコ葉)」4、「フレーバー(ダークリーフ)」4、「フレーバー(モラセス)」5、「フレーバー(ハーブ・ノンタバコ)」2、機材メーカー2という構成。呼称に幅があるのは、各国のたばこ葉のブレンド方式が業界内で統一されていないことの反映で、本データベースは財務省の認可書類上の記載に基づいて分類している。
トルコ・アメリカ・中東の三極、追うロシア
原産国別の上位は、トルコ819銘柄(27.8%)、アメリカ697(23.7%)、ヨルダン404(13.7%)、UAE401(13.6%)、ロシア238(8.1%)、インドネシア97(3.3%)、インド96(3.3%)、ロシア/モルドバ表記50(1.7%)、マレーシア48(1.6%)、スペイン29(1.0%)。以下ドイツ28、中国20、エジプト10、モルドバ4などが続き、原産国として記録される国・地域は合計16にとどまる。上位4カ国で全体の78.8%を占め、日本国内で流通するシーシャフレーバーの認可銘柄は地理的にごく少数の生産国に集中していることがわかる。
なお「ロシア」と「ロシア/モルドバ」の表記の分裂は財務省の認可書類上の記載の揺れによるとみられ、実質的には同一の生産圏として合算するのが妥当だ。合算すると288銘柄(9.8%)になる。
ブランド別トップ15、銘柄数と市場シェアは別物
ブランド単位の認可銘柄数トップは、Azure(アメリカ)161、Samurai(ロシア)150、Dozaj(トルコ)139、Tangiers(アメリカ)117、Al Waha(ヨルダン)104、Buta(ウクライナ)99、JiBiAR(トルコ)95、Al Fakher(UAE)81、MOTTO(トルコ)80、Sebero(ロシア)80、Social Smoke(アメリカ)79、Darkside(ロシア)74、Doobacco(スイス/ドイツ)71、TickTock(ヨルダン)69、Tokyo Shisha(日本)69の順(括弧内は/database/のブランド情報に基づく本拠国)。
目を引くのは、世界最大級の流通量を持つとされるAl Fakherが銘柄数では8位(81銘柄)にとどまる点だ。少数の定番フレーバーを安定供給する「入門用の標準」戦略のブランドで、銘柄数の多さと市場シェアの大きさは必ずしも一致しない。逆にAzureやDozaj、Samuraiのように頻繁に新フレーバーを投入して銘柄数を積み上げるタイプのブランドが上位を占める傾向がある。
ブランドの本拠国別ではトルコ17ブランド、ロシア13、アメリカ11、UAE10、ヨルダン5と、トルコ・ロシアで参入ブランド数の上位を占める。ただし原産国別の銘柄数シェアではロシア(単独238、合算288)はトルコ(819)に遠く及ばない。トルコには少数精鋭のブランドと大量投入型ブランドが混在する一方、ロシア系は相対的にブランド数の割に一ブランドあたりの銘柄数が積み上がりやすい構造にあることを示唆する。
2022年ピークからの一進一退、そして直近の反発
初回認可日の年別集計は、2018年115、2019年270、2020年325、2021年458、2022年590(ピーク)、2023年338、2024年490、2025年243、2026年(1〜7月)114。2018年から2022年にかけて右肩上がりに増加した後、2023年に急減、2024年に持ち直し、2025年に再び落ち込むという一進一退が続いている。2026年は年換算で年間200銘柄前後のペースになりうるが、下半期の申請動向次第で変わるため、最終値の予測は控える。こうした隔年での増減は、個別ブランドの大型フレーバーライン投入が年間集計に強く影響するためとみられ、業界全体の需要動向を直接反映しているとは限らない。
直近1年(2025年7月〜2026年7月)に初回認可された銘柄は287件で、全期間累計の9.8%にあたる。ブランド別ではTangiers(アメリカ)が65銘柄と際立ち、直近1年の新規認可全体の22.6%を単独で占める。次いでJent27、Bonche24、Revoshi20、Azure17、Mezza15、Adalya13、Kraken13と続く。原産国別ではアメリカが87銘柄で最多だが大半はTangiers1ブランドによるもの。次いでロシア76、ロシア/モルドバ32(合算108)、トルコ56で、全期間累計でのトルコの圧倒的シェアとは対照的に、直近1年の新規認可ペースではロシア系がトルコを上回っている。一時的な動きか構造的なシフトの兆候かは、今後1〜2年の推移を見ないと判断できない。
研究員の考察
累計データが示すのは、日本のシーシャフレーバー市場が「トルコ・アメリカ・ヨルダン・UAE」の4カ国でおよそ8割を占める寡占構造だという事実だ。一方で直近1年の新規認可を見ると、この構図に変化の兆しがある。ロシア系ブランド(Samurai、Sebero、Darkside、Buta等)の新規銘柄投入ペースがトルコを上回っており、累計シェアではまだ大差があるものの、勢力図の「更新頻度」という観点では既にロシア系が主導権を握りつつあると言えそうだ。
Al Fakherのように銘柄数を絞り込みながら流通量で圧倒するブランドと、Azure、Tangiers、Samuraiのように頻繁な新製品投入で銘柄数を積み上げるブランドという、二つの異なる事業戦略が同じ市場で併存している点も興味深い。認可銘柄数だけを見ると後者が「勢いがある」ように映るが、実際の店頭シェアや消費量との相関はこのデータベースだけでは検証できない。銘柄数の推移はあくまで「新規フレーバーの投入ペース」という一指標として捉え、今後は/database/の継続更新を通じて店頭の取り扱い状況など別の指標との突き合わせを進めていきたい。単一年の数値変動に過度な意味づけをするのは避け、複数年の移動平均で捉える分析も次回以降加えたい。