3行要約
- 2025年後半から2026年にかけ、炭を使わず電気で加熱する「電気加熱式シーシャ」の国内製品発表が相次いだ。事業者向け「SMARTSMOKE」(2025年9月発売)、携帯デバイス「ターレスネクスト2」(同年11月発売)などが代表例。
- 実はモラセスを電熱加熱する方式(SMARTSMOKEや海外製XKAH・ENSO)と、リキッドを気化させる方式(ターレスネクスト2)という、規制上の扱いが異なりうる2系統が混在している。
- CO中毒リスクの排除やセッティング時間の短縮は店舗側のメリットだが、電気加熱式デバイスの扱いについて財務省・国税庁が明示的な見解を示した一次情報はまだ見当たらない。
炭を使わないと何が変わるのか
従来のシーシャは炭を熱源にモラセス(糖蜜漬けのフレーバータバコ)を加熱し、水を通した煙を吸う仕組みだ。火加減の調整には熟練が要り、セッティングに20〜30分。炭の燃焼に伴う一酸化炭素(CO)の発生や火傷・火災のリスクも構造的に付きまとう。
電気加熱式シーシャは、電熱線や電熱プレートでボウル内のモラセスを直接加熱する。2025年9月にリリースされた事業者向け製品「SMARTSMOKE」は、炭の加熱技術をデジタル制御化したという独自の熱伝導システムを搭載し、スイッチひとつの簡単操作、自動電源オフによる安全性、セッティング時間の3分程度への短縮を打ち出す。海外製のXKAHやENSOも上部・下部からモラセスを加熱する方式で、XKAHは最大305度まで温度調整可能・約90分駆動とされる。いずれもボウルに実際のモラセスを盛って中央に穴を開けるという従来と同じセッティング作業が要る点から、加熱源が変わるだけで使うフレーバー自体は従来と同じたばこ製品と考えられる。
一方、同時期に登場した「ターレスネクスト2」(2025年11月4日発売、株式会社ドローム)は毛色が違う。「ダイレクトリキッドシステム」という気化方式で、専用カートリッジ(2個入り4,480円)を交換して使う。たばこ葉を加熱するのではなくリキッドを気化させる仕組みで、SMARTSMOKEやXKAH・ENSOとは根本的に異なるカテゴリーの製品だ。
相次ぐ新製品、それぞれの立ち位置
SMARTSMOKEは2025年9月25日(一部媒体では29日とも)発売、現時点では事業者向けのみの申し込みという。価格はサブスクリプション型で、初期費用12,000円(税込)と保証料10,000円(税込)に加え、月額は12ヶ月プランで5,980円(税込6,578円、初期キャンペーン価格)、6ヶ月プランで9,980円(税込10,987円)。
ターレスネクスト2は、Makuakeで累計2,000万円超の支援を集めた「ターレスシリーズ」の後継機。スターターキット5,480円(税込)、フレーバーカートリッジ(2個入り)4,480円(税込)で、11種類のフレーバーが用意される。従来比で約2倍の気化効率を実現したという。XKAH・ENSOについては海外ブランドとして専門店・通販サイト経由の紹介例は確認できるが、国内での正式な発売時期や取扱い代理店、販売実績はまだ見えていない。
店舗にとっての利点と、味の壁
電気加熱式のメリットは、CO中毒リスクの排除、火傷・火災リスクの低減、セッティング時間短縮によるオペレーション効率化に集約される。炭の管理・補充・廃棄が不要になる点も、人手不足が課題の飲食業態には運用上の利点だ。
ただし比較検証記事では、味や煙の質は従来の炭シーシャに軍配が上がるとの評価もある。ブラインドテストでXKAHを炭と誤認するほどの再現性を示した例がある一方、ENSOは「炭で作るシーシャに比べると物足りなさが否めず、若干のイガりを感じやすい」との評価も見られる。携帯型デバイスは容量の制約から複数人でのラウンジ営業には不向きとの指摘もあり、店舗用途での本格導入が進むかは今後の検証課題として残る。
規制上の分類 — たばこ製品かリキッドか
日本国内でシーシャに使うモラセスは水たばこの一種として、たばこ事業法上の「たばこ製品」に分類される。店舗でこれを扱うには製造たばこ小売販売業の許可か、たばこの対面販売許可(出張販売許可)が必須で、国内で登録された銘柄のみが流通対象になる。SMARTSMOKEやXKAH・ENSOのように実際のモラセスを加熱源だけ変えて使う製品である以上、この「たばこ製品」という分類そのものが変わるとは考えにくいが、電気加熱式デバイスそのものについて財務省や国税庁が明示的な見解を公表した一次情報は確認できていない。
対してターレスネクスト2のようにたばこ葉を使わずリキッドを気化させる製品は、たばこ事業法上のたばこ製品には該当しないと整理されている。国内製の電子シーシャ用リキッドは薬機法によりノンニコチンと定められるとされ、この枠組みではたばこ税の課税対象にもならないと考えられる。ただしターレスネクスト2自体の公式発表でニコチン成分の有無が明記されているかは確認できておらず、この点は今後の一次情報を待ちたい。
研究員の考察
「炭を使わない」という一点は共通していても、実際には「モラセスを電気で加熱する方式」と「リキッドを気化させる方式」という、規制上の扱いが異なりうる2つの系統に分かれている点には注意が要る。前者は従来の炭シーシャと同じたばこ事業法の枠組みに服し、店舗側の許認可構造を変えるものではなく、あくまでオペレーション効率化・安全性向上のツールという位置づけになる。後者はたばこ製品としての規制を外れる代わりに、国内では薬機法上ノンニコチンという制約を受ける、性質の異なる製品カテゴリーだ。
現時点の情報を突き合わせる限り、電気加熱式シーシャが店舗の許認可・仕入構造を根本的に変える段階には至っておらず、当面はCO対策や省力化の手段として従来型と並行導入が模索される段階と見るのが妥当だろう。財務省・国税庁が電気加熱式デバイスの扱いをどう明示するか、そして味・煙質がどこまで炭に近づくかが、この分野の普及を左右する焦点になりそうだ。